2017年2月3日金曜日

【解説】#3 The Killers - Mr. Brightside


"Mr. Brightside"は、アメリカのロック・バンドThe Killersのデビュー・シングル曲。デビュー・スタジオ・アルバムである2004年リリースの"Hot Fuss"にも収録されました。バンド・メンバーのBrandon FlowersとDave Keuningの共作曲で、元々は2003年の9月29日にリリースされたのですが、当初は大きな成功にはなりませんでした。しかし、2004年に再リリースされると人気を博し、最終的には全米・全英両チャートで最高位10位を記録するヒット曲となりました。また、この曲はThe Killersが書いた初めての楽曲のうちの1つでもありました。

ミュージック・ビデオは2種類作られていて、モノクロ映像のものと、2001年の映画『ムーラン・ルージュ』を基にした映像になっています。

この曲は、イギリスのラジオ曲であるAbsolute RadioとXFMの"Song of the Decade"に選ばれており、2010年4月にはLast.fmで、オンラインでの音楽サービスを開始してから最も聴かれた楽曲であることが明らかにされています。2010年10月には、Total Guitar誌による「21世紀でこれまでで最も素晴らしいギター・リフ」の9位に選出されています。この曲はThe Killersにとって、アメリカで最も売れた楽曲となっています。







・曲が完成した経緯

この曲はアップビートでありながら、不貞・偏執症・嫉妬といった問題について扱った楽曲となっています。元カノが浮気していたことにBrandon Flowersが心を痛めたためにできた曲だそうです。

2012年の「NME」のインタビューの中で、Brandonは次のように語っています。
「僕たちは2001年の終わりくらいまでにこの曲を書かなきゃいけなかったんだ。当時、Daveと僕はたくさんの楽曲を書いていて、僕たちを突き動かすものが何なのかを探ろうとしていたんだ。(The Strokesの)"Is This It”をヴァージン・メガストアまで発売日に買いに行ったのを覚えているよ。僕たちはそのアルバムを車で聞いていたんだけど、本当に完璧なアルバムだと思った。その後、僕はとても落ち込んだよ。僕たちはほぼすべての楽曲を葬り去ったんだけど、唯一残ることになった楽曲がこの"Mr. Brightside"だったんだ」

「この曲は、Daveのアイデアが詰まったこのカセットから生まれたもので、その中に"Mr. Brightside"のリフが入ってたんだ。僕はそこにコーラスとリリックを乗せることができた。それで、これを気に入ったと思った。だけど、ドラマーと初めて演奏したときにはじめてこの曲が特別だってことに気づいた。僕たちは彼の家へ行って、曲を演奏したんだけど、鳥肌が立ったよ」

「NME」のインタヴューの中で、Brandonはさらに次のように書き記しています。
「スタジオにいて、デモをレコーディングしたんだけど、まだリリックが書き途中だったことを覚えている。リリックは先延ばしにしていたんだ。だから、1番目のヴァ―スと2番目のヴァ―スが同じなのさ。だけどただ行き詰まったってだけなんだ。僕が感動するのは、未だにこの曲がこんなにもパワフルだってことでね。つまり、同じリリックなのに2番のヴァ―スも1番目のヴァ―スと同じくらいパワフルに思えるんだよ。それも毎晩。この曲には何かがあるんだ。それは一瞬のものだ」

「デモを制作したときのことを覚えているよ。当時、僕はすべてのことに対してナイーヴになっていたんだ。僕たちはデモを配っていたんだけど、そしたらラスベガスのあるレコード店で働いていた女の子が、『あぁ、"Mr. Brightside"って、この曲をあなたたちのデビュー・シングルにするべきよ』って言ってくれたのを今でも覚えている。僕にそんな言葉をかけてくれる人なんて今まで誰もいなかったんだ。僕は当時、頭の中で考えていたよりも、全然違う場所にいるって感じだった。だけど、彼女の言葉を聞いて僕の中で何かが変わったんだ。わかったんだよ。いわゆる男にならなきゃいけないってね。そして僕の頭を正しい場所に置かないといけないってことをね!」

さらに2015年の『SPIN』誌のインタヴューで、この曲をお気に入りの曲として挙げ、次のようにコメントしています。

「始め、僕が聴いたのはリフだけだった。リリックはそのあと出来た。携帯電話が登場する前のことだよ・・・。僕は初めてこのコードを聴いて、リリックを書き下ろしたんだけど、そんなに時間はかからなかった。僕たちはそのあとすぐに、デモを作るってところまできたんだけど、そこから時間がかかった。それは2番目のヴァ―スがなかったからなんだ。始め、2番は1番と一緒だった。僕はただほかの言葉が思いつかなかっただけなんだけど、最終的にそのままにすることになったわけさ。ライヴでこの曲を演奏しなかったことは今まで一度もないよ。だって、この曲は時の試練に耐えてきたわけだからね。それを僕は誇りに思っているんだ。この曲を歌うのにウンザリしたことなんてないよ」


・歌詞和訳

[Verse 1]
I'm coming out of my cage
And I've been doing just fine
Gotta gotta be down because I want it all
It started out with a kiss
How did it end up like this
It was only a kiss, it was only a kiss

檻から飛び出そうとしている
僕はうまくやってきたのに
落ち着いていられたのに。全てがほしいから
キスから始まった
どうしてこうなったんだ
ただのキスだった。ただのキスだったのに

Now I'm falling asleep
And she's calling a cab
While he's having a smoke and she's taking a drag
Now they're going to bed
And my stomach is sick
And it's all in my head, but she's touching his

僕が眠りに落ちようとすると
彼女はタクシーを呼んでいる
アイツはタバコを吸って、彼女がその煙を吸い込む
そして二人はベッドに入ろうとする
吐き気がするよ
僕の妄想だけど、彼女は触れているんだ。彼の

[Pre-Chorus]
Chest now
He takes off her dress now
Let me go
I just can't look its killing me
And taking control

胸をね
アイツは彼女のドレスを脱がせる
もうやめてくれ
もう見ていられない。耐えられないよ
何も手につかなくなってしまう

[Chorus]
Jealousy, turning saints into the sea
Swimming through sick lullabies
Choking on your alibis
But it's just the price I pay
Destiny is calling me
Open up my eager eyes
Cause I'm Mr. Brightside

嫉妬、それは聖人をも海に吞み込む
病んだ子守歌の波をかき分けながら進む
君の言い訳の数々には言葉も出ない
だけどこれは僕の払うべき代償なんだ
運命が僕を呼んでいる
鋭い観察眼を見開いて
だって僕はミスター・ブライトサイドだから

[Verse 2]
I'm coming out of my cage
And I've been doing just fine
Gotta gotta be down because I want it all
It started out with a kiss
How did it end up like this
It was only a kiss, it was only a kiss

檻から飛び出そうとしている
僕はうまくやってきたのに
落ち着いていられたのに。全てがほしいから
キスから始まった
どうしてこうなったんだ
ただのキスだった。ただのキスだったのに

Now I'm falling asleep
And she's calling a cab
While he's having a smoke and she's taking a drag
Now they're going to bed
And my stomach is sick
And it's all in my head, but she's touching his

僕が眠りに落ちようとすると
彼女はタクシーを呼んでいる
アイツはタバコを吸って、彼女がその煙を吸い込む
そして二人はベッドに入ろうとする
吐き気がする
僕の妄想だけど、彼女は触れているんだ。彼の

[Pre-Chorus]
Chest now
He takes off her dress now
Let me go
I just can't look its killing me
And taking control

胸をね
アイツは彼女のドレスを脱がせる
もうやめてくれ
もう見ていられない。耐えられないよ
何も手につかなくなってしまう

[Chorus]
Jealousy, turning saints into the sea
Swimming through sick lullabies
Choking on your alibis
But it's just the price I pay
Destiny is calling me
Open up my eager eyes
Cause I'm Mr. Brightside

嫉妬、それは聖人をも海に吞み込む
病んだ子守歌の波をかき分けながら進む
君の言い訳の数々には言葉も出ない
だけどこれは僕の払うべき代償なんだ
運命が僕を呼んでいる
鋭い観察眼を見開いて
だって僕はミスター・ブライトサイドだから

[Outro]
I never
I never
I never
I never

僕は決して
僕は絶対に
僕は決して
僕は絶対に


・偉業

各誌2000年代ベスト・ソングにも軒並みランクインしています。


『Rolling Stone』誌

2000年代のベスト・ソング100で49位。

They crawled out of Vegas armed with glitzy beats and faux Bowie accents. "Mr. Brightside" made them famous, bringing New Wave ecstasy and a story line that sums up the first two seasons of Gossip Girl.
「彼らは、きらびやかなビートと似非Bowieアクセントで武装して、ベガスから這い出てきた。"Mr. Brightside"は彼らの名前をお茶の間に広めたのだ。ニューウェーヴにエクスタシーと、ゴシップ・ガールの初期2シーズンを総括したかのようなストーリー・ラインを加えることで」


「NME」

2000年代のベスト・ソングで41位。

How about this for serendipity? ‘Mr Brightside’ was the very first song The Killers wrote together, at their very first rehearsal session (you can hear the original 2001 demo version on YouTube). Imagine that: within hours of entering the practice studio you’re playing this: a song so melodically perfect, so surging, and so urgent, it will soundtrack end-of-the-night, scream-the-words carnage for decades to come (it’s also the most Scrobbled track in the history of Last.fm).
「この曲をセレンディピティのためのものにしたらどうだろう?"Mr. Brightside"はThe Killersが、本当に初めてのリハーサル・セッションで全員で書いた、本当に初めての曲だった(YouTubeで2001年のオリジナル・デモ・ヴァージョンも聴ける)。想像してみてほしい。練習スタジオに入ったら1時間以内にこの曲を演奏しているのだ。メロディーは完璧、渦巻くようであり、緊迫感もある。これから数十年にわたり、この曲は「夜の終わり」と「言葉を叫ぶ」大虐殺のサウンドトラックになるだろう(そしてLast.fmで最もScrobbleされた楽曲でもある)」



「Pitchfork」

2000年代のトップ・トラック500で72位。

In the decadent, Moulin Rouge-inspired, ham-a-lot video for "Mr. Brightside", Brandon Flowers and Eric Roberts battle for the love of a ghostly courtesan by playing a game of... checkers. Not chess. Not poker. Not, like, a pistol duel-- checkers! Is there a less sophisticated and/or consequential way to settle a score? (Naturally, Flowers eventually flips the board in disgust, ending the brief showdown.) But this band of Vegas showboats are at their best playing to the masses and letting their flamboyant flags fly. Merging Duran Duran makeup, New Order hi-hats, and Bruce Springsteen-ian grandiosity, they gave rock fans a non-geriatric arena-ready alternative to the world's Nickelbacks this decade, and for that we owe them thanks. Custom fit for a generation weaned on Shakespeare Lite farces like "The O.C.", the Killers blew up everyday dramas-- jealousy! betrayal! heartbreak!-- into Gone With the Wind-style epics. Rampant melodrama is their BFF.
「デカダンの時代の、ムーラン・ルージュを思い出させる、"Mr. Brightside"の大げさなビデオの中で、ブランドン・フラワーズとエリック・ロバーツは、ゴーストのような娼婦を巡る愛のために戦う。チェッカーをゲームすることで。チェスではない。ピストルによる決闘でもない。チェッカーでね!恨みを晴らすために、こんなに洗練されてなくておかしなやり方って他にあるだろうか?(当然、ブランドン・フラワーズは最終的に、ウンザリしながらボードをひっくり返してしまい、短い対決は終了する。)しかし、ベガス出身のこのバンドのショーボートでは、大衆に向けて最高の演奏を披露しているし、きらびやかなフラグをはためかせている。Duran Duranの化粧、New Orderのハイハット、Bruce Spingsteen的な壮大さを融合させ、ロック・ファンに向けて、懐古的になることなく、アリーナに通用するサウンドを打ち出し、21世紀を席巻していたNickelbackの代替的存在となった。そういう意味で私たちは彼らに感謝している。"The O.C."のような、シェイクスピアのライト版みたいな茶番劇を卒業した世代にぴったり適合させながら、The Killersはみんなの夢を大げさに語る。それが、嫉妬!裏切り!失恋の痛み!であり、それらを「風と共に去りぬ」のような叙事詩へと落とし込んだ。世にはびこっているメロドラマは彼らのBFFなのだ」


『Slant』誌

2000年代のベスト・シングル100で48位。

The lessons of “Mr. Brightside”: 1) Brandon Flowers was less detectably a tool before he hit it big, even if he was already writing messianic songs about his own success, 2) although we live in the era of “A Shot at Love,” as it was for Elvis and the Rolling Stones, romantic paranoia remains a fruitful topic for the rock anthem, and 3) if your band used synthesizers in your hit record in the mid-2000s, people would compare you to Duran Duran even if your song actually sounded like all the best things about U2 and Blink-182 combined.
「"Mr. Brightside"から学べること。1)この曲がヒットするまで、ブランドン・フラワーズはそんなに自分をよく見せようとはしていなかった。彼が仮に自身の成功についての救世主的な楽曲をすでに書いていたとしても。2)私たちは"A Shot at Love"の時代を生きている。しかし、実際にElvisやRolling Stonesもそうであったように、恋愛のパラノイアは、ロックアンセムにとって欠かせない新鮮なトピックであり続けている。3)もし2000年代中盤のバンドがヒット曲のためにシンセサイザーを使っていたら、人々はDuran Duranと比べるものなのだ。実際には、U2とBlink-182を融合させて最高にした感じの楽曲であっても」


「VH1」

2000年代のグレイテスト・ソング100で55位。



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